絵付けのはなし(絵の具やお道具について)

【コスモスの絵付け(チャイナペイント)の仕方】花びらをクロックポジションに配置して書く

猛暑の疲れた体に、朝晩の風が心地よく涼しくなってくる頃、どこからともなくコスモスの便りが届いてきます。

こういう便りが・・「ああ~秋か~~~」と思わせてくれますね。

花が季節を知らせてくれる・・・秋を届けてくれる花コスモス。

季節の器でお茶をしたりお料理を盛りつけたりすることは、日常の楽しみであったり、日々幸せに、心豊かにい過ごすためには・・と考えた知恵の結果でもあります。

秋になったら、コスモスのティーカップで優雅にお茶したいと思いませんか?それも自身で描いたカップで・・絵付けしたカップで・・。

今回は時計の文字盤(クロックポジション)で、コスモスの上手な描き方(絵付けの仕方)を解りやすく書いていきます。絵付けにご興味のある方は、どうぞお付き合いください。

余談ですが、今では「秋桜」と書いて誰もが「コスモス」と読んでくれますが、実は秋桜と書いて「コスモス」と読むようになったのは昭和52年から・・。

本来「秋桜」と書くと「アキザクラ」としか読みません・・が、

山口百恵の歌、嫁ぐ娘が母を思う歌、「秋桜」を「コスモス」と読ませてからです。
この読み方は当時の流行りでした。ほかに「本気」を「マジ」と読ませ、「恋敵」を「ライバル」と読ませました。今では当たり前のように一般化していて、使う人が多くなるとこうなるんだ~という例ですね。

絵付けとは?

まず、ここで「絵付け」という言葉が気になってきます。絵付けって何なのでしょうか?

絵付けの本来のながれ

単純に申しますと、絵付けをする相手が紙ではなく陶器や陶磁器、ガラス等に絵を描く事を絵付けと言います。

本来の陶磁器の流れから言いますと、型作り→素焼き→釉掛け→本焼き→の流れが一般的です。

素焼きの後、釉薬をかける前の素焼きに絵付けすることを下絵(したえ)
釉薬をかけて本焼きの後にする絵付けを上絵(うわえ)といいます。

この言葉については以下の記事に詳しく書いています。参考にしてください

いろいろ細かなことを説明してきましたが、上手に描くポイントは何でしょうか?

絵付け上達のための3つのポイント

ポイント1=絵付け用の絵の具と材料に早く慣れること、絵付け用の絵の具は粉状のものを使用すること。

ポイント2=常に花の配置をクロックポジションで描くこと。

<クロックポジションの意味>
観測する人を中心に置き(時計で言うと中心の点です)正面を12時とした場合の方向を示す手法です。

となると観測者が水平に両手を挙げた場合右手の方向が3時、左手が9時の方向になります。

ポイント3=毎日コツコツ筆を持ち描く時間を積み重ねること

絵付けの前に準備したい道具

《絵付けするのに必要なもの》

・絵付け専用の電気炉

・絵付け専用に絵の具

・絵の具溶きオイルいろいろ

・描きやすい筆(やわらかくて保湿の良いもの)

・絵付け用白磁

絵付けの道具は少し特殊です。絵の具は普通の水彩絵の具やアクリル絵の具とは、違う種類のものになります。

窯に入れて焼成した時にちゃんと発色していること。そして高温(760~830度)に耐えられる絵の具であることが絶対条件になります。

コスモスの絵付けをするための準備

実際に筆を持って絵付けするまでに準備するものを順番に書いていきます。

絵の具

上段が1回目の上絵付けの絵の具です。下段が2回目の上絵付の絵の具です。

筆ですが、何でもいいといえばいいのですが、絵付けを進めていくと小さな不都合に行き当たります。

もう少し色の伸びがあったら・・とか、器と筆のタッチが滑らかだったら・・とか・・。

その少しのイライラを解消してくれるのがこちらの筆、コリンスキー。ちょっと高価ですが、とても滑らかで色もちもよく、実に使いやすい筆です。

薄め液と筆洗い液

薄め液は絵の具が固くなった時に、少しずつ筆に含ませて使います。私はラベンダー液を使っています。絵付けのいい状態を保ってくれます。

テレピンは筆を洗う液です。

パレット

絵の具を溶くためのもの、小さいほうで1つ1つ溶いて、大きいパレットに移していきます。

白磁

絵付けをする相手です、ここではわかりやすくタイルに描いていきます。

陶磁器やガラスに絵付けをする

やっと描く所まで来ましたが、もう少しだけ細かなことを書きますね。

筆と陶磁器との関係

白磁器にコリンスキーの筆を使って描いていきますが、白磁器はツルツルしています。

そのツルツルの面に描きやすい筆が、私の場合コリンスキーの筆になります。

・描きにくいな~と感じた時はどうしたらいい?

描き進むと、なんだか描きにくいな~と感じるときがあります。それは陶磁器の面と筆の角度があっていない時です。

たいていは、左手にお皿、右手に筆を持ちますね、花びら1枚1枚描き進めますが(この後の描き方の順番を参考にしてください)1枚目の花びらを描き終わり、2枚が目の花びらに移るとき、ちょっと描きにくい・・と思った時・・

その時はに少しお皿やグラスをまわしてください。(わかりにくい人は、右や左にお皿を動かして自分で描きやすい角度を見つけてください)

コスモスの絵付け完成はこちら

平らな陶板に絵付けしたものです。

ガラスのコップにコスモスを絵付けしました。

さて一緒に絵付けしてきましょう。

コスモスを描きます(上絵付1回目)

薄いピンク、黄緑、薄い黄色の3色の絵の具を用意します

絵の具を溶く

<絵の具を溶く時のコツ>
粉の絵の具と溶き液の割合は6:4がいいでしょう。(季節や湿度によって状態が違ってきますので粉の絵の具と溶き液の割合は7:3という場合もあります) 溶いた絵の具の状態は水彩絵の具よりは硬くを意識して練ってください。

こねればこねるほど絵の具の粒子が細かくなるので磁器への定着が美しくなります。

小さいタイルで1つ1つ絵の具を溶いていきます。タイルの端を左手でしっかり押さえ、粉の絵の具にオイルを入れてシャッシャッ・・と粒が残らないように滑らかになるまで練ります。

溶いた絵の具の状態はサラサラでもなく固くもなく、見た目こんな感じです。

描く時のクロックポジション

描く時にラフ画を作ると描きやすいので、その時の配置も以下のように、8枚の花びらをクロックポジションに1、2,4,5,7,8,10,11に配置して直接陶磁器やガラスに鉛筆書きをします。

次は筆を持って絵付けしていきます。

コスモスを描く時の筆の動き

画像のように花を4等分にします。

・右上1時の方向外側から緩やかなカーブを描くように中心に向かって筆を進めます。次は2時の方向。

・左上11時の方向外から緩やかなカーブを描くように中心に筆を進めます。

・あとは同じように右下4時、5時、左下8時、7時・・と進めて下さい。

筆の動きを画像にしました、左から右の順番に進めてご覧くださいね。
1時の方向からすっ~と入り、花びらの途中で筆のはらを8割つぶし、花芯に近くなった所で筆の力を徐々に緩めて花芯に到着した所でゆっくり筆を外します。その繰り返しで描いて下さい。

花びらはこんな感じで、1回目の絵付けができました。この後、専用の窯にいれて焼成します(焼成温度800℃。物量にもよりますが約4時間~5時間、徐冷に6~10時間)。

コスモスを描きます(上絵付2回目)

絵の具はピンク2色、黄色、緑3色、茶、黒の8色を用意します。(①~⑧を参考に)

2回目の絵付け、左から右への順番にご覧ください。花びらに色付け(肉付け)してから細筆で線描きします。

左から右への順番で花芯と葉の絵付けをご覧ください。

この後焼成したら完成です。

お疲れ様でした。

まとめ

コスモスを上手に絵付けする時の重要ポイントをまとめました。

《絵付けするのに必要なもの》

・絵付け専用の電気炉

・絵付け専用に絵の具

・絵の具溶きオイルいろいろ

・描きやすい筆(やわらかくて保湿の良いもの)

 

《コスモスの絵付けをする時のコツ》

■描く時のクロックポジション

描く時にラフ画を作ると描きやすいので、その時の配置も以下のように、花びらをクロックポジションに1、2,4,5,7,8,10,11に配置して直接陶磁器やガラスに鉛筆書きをします。

次は筆を持って絵付けしていきます。

■コスモスを描く時の筆の動き

画像のように花を4等分にします。

・右上1時の方向外側から緩やかなカーブを描くように中心に向かって筆を進めます。次は2時の方向。

・左上11時の方向外から緩やかなカーブを描くように中心に筆を進めます。

・あとは同じように右下4時、5時、8時7時・・と繰り返しになります。右下、左下も同じく進めて下さい。

以上、クロックポジションに花びらを配置する、しっかり頭に入れてあとは描くのみです。

ここまでお読み下さりありがとうございました。

ABOUT ME
HITOMI らら
20代の時から洋食器に関わりフリーハンド絵付けの教室を運営してる ”らら””がその歴史や技術はもちろんの事。絵具、道具、焼成窯に至るまでを伝えていきます。